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「曖昧母音が分からない、音声変化や脱落が聞き取れない」
これらは全て「英語のリズム」を理解することで解決できます!
挨拶:トピック紹介
皆さんこんにちは、発音ディレクターDr. Dです。
英語の発音には日本語には存在しない様々な要素が含まれます。例えば、短く曖昧に発音される母音(曖昧母音)、音がつながるときに起こる音声変化、また音が脱落するリダクションなど。
これらが原因でネイティブの発音が聞き取れないことが多いわけです。今回はこれらを全て「英語のリズム」を理解することによって解決していきたいと思います。
発音記号通りに発音しない英語
英語はスペルや、また発音記号通りに発音されないことが多々あります。これはフレーズ全体を滑らかにつないで発音するために、音を変化させているからです。例えば次の様なケースがあります。
・母音の曖昧化(曖昧母音)
He is at school
/heez ut skool/
Classify
/kla suh fai/
・単語同士をつなぐ(リンキング)
Take away
/tei kuh wei/
Take that
/tei(k) tha(t)/
・Tの変化(音声変化)
Get it on
/ge di daan/
I want to do
/uh wah nuh doo/
・音が脱落する(リダクション)
One of those people is…
/wuh nuh thouz/
Probably
/Praab li/
こういった音の変化が起こり、しかも速く発音されると日本人にとってはなかなか簡単に聞き取ることはできません。
なので、あらかじめこういった発音の変化を知って、自分でも発音できる様にしておくことで徐々にパターンが読める様になり、聞き取れる様になってきます。
そのためにはまず、英語のリズムを先に理解しておくことで、これら音の変化のパターンを全て包括的に理解することができます。
英語はリズムで話す言語
まず第一に知っておかなければならないこと。英語は “Stress-Timed Language”と呼ばれており、これは「ストレスで拍をとる言語」だということです。拍というのはリズムの単位のことです。
簡単にいうと、「タン・タン・タン」とリズムをとると、それは3拍ということになります。「I’m coming right away」と発音すると、3拍で発音したことになります。これが拍です。手拍子は手で拍を取る動作です。
英語はストレスと呼ばれる強調する音節を、この「拍」で捉えます。「I’m coming right away」というフレーズだと「com, right, way」の部分がストレスとなります。ストレスは意味が強い言葉に置かれ、単語の中のストレスの位置は決まっています。
例えば、awayは /uh wei/ と2音節で発音されますが、/wei/ の音節がストレスです。
このようにストレスでリズムをとるように発音すると、強い音と弱い音が交互に発音される感じになり、フレーズで発音した時に「リズミカルな発音」が生まれるわけです。
Where are you?
/wer AR yuh/
I’m coming right away.
/um KUH min RAI da WEI/
I’ll be there in a minute.
/ul BEE ther na MI nut/
母音の曖昧化
英語を発音する時は、ストレスで声を張ったら脱力して、声を張ったら脱力しての繰り返しです。
HAH ha HAH ha HAH
この「ha」の弱い音が曖昧母音になります。
I’m coming right away.
/um KUH min RAI da WEI/
ストレスが置かれない音節が曖昧化する感じです。
この母音は特定の母音の音とかではなく、ただの脱力した声です。
曖昧母音のエクササイズ
この曖昧母音を出す感覚を、リズムで発音することで感じとってみましょう。
同じ母音を強弱で発音して「はっきりした母音」と「曖昧な母音」を交互に発音します。
ルール1、全体を一息で発音
ルール2、脱力しながら弱音へ向かう
(1) TAH ka TAH ka TAH ka
Talk about it
I’d like to talk about it.
(2) BAH ta BAH ta BAH ta
I bought it
I bought a lot of bottles.
どうですか?母音が曖昧化するネイティブの発音感覚が少し分かりましたか?
単語同士をつなぐリンキング
リンキングに関しても英語のリズムが深く関わっています。
例えば「Take it out」と発音する時も、全体を一息で「Take(強) it(弱) out(強)」のように強弱のリズムで発音します。このように発音すると自然と音がリンクしませんか?
Take it out
/TEI kih DAU(t)/
これをカタカナ発音で発音すると「Take(強) it(強) out(強)」となってしまい抑揚がなくなってしまいます。
Tの変化(音声変化)
そして滑らかな抑揚を描くために、引っかかりやすい音を軽く濁らせて発音することがあります。これの代表的なのがFlap Tと呼ばれる「Tの変化」です。
「Take it out」と発音する時、it の /t/ が弱い /d/ の音に変化しています。そうすることで滑らかに音をつないでいるわけです。この時に舌の位置は /t/ のままですが、少し弱く濁らせて発音しています。
リンキングのエクササイズ
この音声変化には色んなパターンがありますが、感覚は全て同じで、流れを出来るだけ止めないように、弱く濁らせて発音した結果、少し音が変化しています。
(1) Get it
/GE dih/
Get it out of your mind
/GE di DAU duv yer MAIND/
(2) Wanted
/WAH neh/
I wanted to do that
/uh WAH ne duh DOO thut/
音が脱落する(リダクション)
さらに英語は音が変化するだけでなく、そもそも脱落してしまう発音もあります。これがリダクションと呼ばれる現象です。
One of those people
/WUH na thouz/
** of の /f/ が脱落している **
Probably
/PRAAB li/
** 連続する /b/ が1つになっている **
結局、これも英語のリズムなんです。ストレスが置かれる音節で拍をとり、それ以外の部分はスムーズに流れるように、少し省略されているに過ぎません。
リダクションのエクササイズ
ストレス音節に挟まれた、弱い発音が省略される感覚を感じてみましょう。
(1) How’s it going?
/HAU zi GOU in/
** it の /t/, または it そのものが省略されている **
(2) I’m going to go grab some food before we get going.
/uh ma na gou/
** going の /g/ が直前の m に吸収されている **
(3) Where did you get that?
/WER ju GEH/
** did you が同化して /ju/ になっている **
(4) I want to catch them right away.
/uh wa na KYAch em/
** them の /th/ が脱落している **
まとめ
というわけで今回は日本人にとって英語の聞き取りにくい要素となる、母音の曖昧化、リンキングや音声変化、音の脱落などの例を取り上げました。
これらは結局ストレスを置いてリズミカルに発音した場合、自然とそのようになるといった感覚なんですね。どれだけ省略しても、ストレスがしっかりとリズムの軸となり発音されているから通じ合えているわけです。
日本語は全ての音節を平坦に発音する言語なので、このストレスを置いてリズミカルに発音する感覚を得ることはそう簡単ではないかも知れません。
しかし、こういった仕組みを理解して発音練習を2、3ヶ月も繰り返していけば、きっと感覚が掴めてくるはずです。そしてこの感覚が分かるとネイティブ発音がより鮮明に聞こえる様になります。そうすると動画を真似るコピーイングやシャドーイングの練習がちゃんとできる様になります。
もし、自分ではどうしようもなければ、ドクターDイングリッシュでトレーナーをつけて少しの間やってみてください。きっとブレイクスルーできるはずです。応援していますので頑張って!
それではまた来週お会いしましょう!
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